インファナル・アフェアは三部作である。物語の全容を捕えるためには、すべて見る必要がある。メインの物語は第一作。第三作のこの映画では、潜入警官ヤンの死後、無間道の本当の意味が明らかになるまでを描く。
「無間道」は仏教用語である。絶え間なく続く地獄の苦しみを表す。具現化された苦しみは第一作で表される。苦しみの始まりは、第二作で明らかになる。そしてなぜそれが終わらない苦しみなのか、無間道の答えは第三作にある。
第三作では、マフィアから警察に潜入したラウ(アンディ・ラウ)が、善人でありたいと、もがく姿が中心に描かれる。背後から迫る恐怖が、ラウを壊してゆく。次第に正気を失うラウの表情が鬼気迫る。ヒーロータイプのアンディが壊れていく過程から目が離せない。
第三作で登場する、ヤン警視(レオン・ライ)。正なのか悪なのか判別しがたい謎の存在である。整った表情で淡々と職務を勧める恐怖の警視である。荒っぽい行動をせずに冷静に存在することが、暴力より怖いと思わせる。
そして、中国本土から来た謎の武器商人、シャドウ(チェン・ダオミン)は何者なのか。基本広東語で進むこのシリーズであるが、突然混ざる北京語の違和感がすごく、謎の武器商人を益々恐ろしいものに感じさせる。
悪人になりきれないヤン(トニー・レオン)、精神療法を行いつつ感情に流されそうになるドクター・リー(ケリー・チャン)。人間であるから踏み込んでしまう、無間道。第一作のオープニングから寺院のシーンが現れるが、宗教を見事な映画に仕立てて、第三作で完結する。しかし苦しみは終わらないのだ。
「俺は、警官だ」