自分の嗜好であるが、実写系アクション映画が好きである。そしてこれらは、どうしても映画館のスクリーンで観てこそ価値がある。上映期間中にリピートする映画は、いずれもこの種のものである。例えば「イニシャルD The Movie(香港)」「トップガンマーヴェリック TopGunMaverick(米国)」「バンバン!BangBang!(インド)」など。そしてこのたび「フォールガイ The Fall Guy 」が加わった。
「フォールガイ」は、初めのうちは良さを理解してなかったと思う。監督ジョディの仕返し? のために、コルトは何度も焼かれてしまうのだが「この女マジ有り得ない」って大いに憤慨した。分割画面は面白いけどここまでしつこく何のため?って思った。カラオケシーンも、なんで引っ張る?って感じた。などなど物語の進行にはホントに必要か?という部分があったのは事実である。基本テンポ良く進むけど、こだわり深く留まるところがある。設定はほんの数日間のはずであるが、ずいぶん多くの出来事が発生している。
繰り返し見るうちに、魔力のように自分を絡める、この映画の面白さが分かってきた。結論、これはスタントマン・スタントウーマンへの愛に溢れた映画なのだ。コルトに何度も火だるまスタントをやらせるのだって、(ジョディではなく)誰か(監督か脚本家か)の趣味なのだ。きっとスタントシーンを強調したいのだ。加えて、出てくる女性陣がやたら強いのは痛快だった。
つまり制作側が大喜びで作った映画に違いない。
カースタントが見事である。ビーチのシーン(キャノンロール8回転半)はもちろん。ハーバーブリッジを通行止めにして撮影されたシーンも秀逸である。周囲を走るクルマも全てスタントチームがオペレーションしている。
最後のヘリからのフリーフォールは、もう見事と言うしかなく、45mの落下だと言う。ドヤ顔で中指を立てるライアンのアップのあと、スタントダブルのトロイ・ブラウンが、何回転かしながら見事に背中から着地する美しさよ。用意されたエアバックは彼の父が愛用していたものを南アから輸送したという。そしてそんなエピソードを最も大切に扱う、デヴィッド・リーチ監督。スタントへの愛に溢れまくっている。
多くの映画へのオマージュが散りばめられているのも見どころ。元ネタの映画を探るのも、素敵なテーマになる。
アカデミー賞に、スタント部門を設けようというメッセージが込められているそうだ。なるほどそれは大切なことだ。単にスタントマンとは呼ばない。スタントアーティスト、スタントパフォーマー、そしてスタントデザイナーである。心底応援するぞ。
スタントに関わり、お名前が分かっているのは次の人たち。ローガン・ホラデイ(カースタント)、ジャスティン・イートン(格闘・武道)、ベン・ジェンキン(火だるまとパルクール)、トロイ・ブラウン(ヘリからのフリーフォール)、クリス・オハラ(スタントデザイナー)、デビッド・リーチ(監督)。