また続く、ひいきの俳優、デヴ・パテル。原題と邦題は同じなのだが、花嫁泥棒か?と、半ばコメディに近いものを予想したら全く違った。デヴ・パテル演じるジェイは、花嫁を誘拐するために雇われた謎の男。これが道中殺人事件になったり、ヤバい橋を渡ったり、全く甘くないアクションスリラーである。性の描きかたはソフトであるが、制作国が、英国・米国なので、ちょっと直接的ではある。インド映画を見慣れている人にとっては、出演者がインド人(民族としての)であっても「あ、表現方法が違う」と感じるのでは。
パキスタンからインド各地へ逃避行を繰り返すのだが、これがスリリングでとても良い。そして各地の風景をたっぷりみられるので、一緒に旅をしているような没入感が得られる。これはずばり「旅好きの人」に刺さる!街の様子、パスポート、ビザ、宿泊地、バス、鉄道、レンタカー……映画のなかで映される出来事が、旅の困難な思い出をチクチク刺激するだろう。
デヴ・パテルは、カッコいいのにちょっと抜けた役どころが多い印象だが、この作品の中ではめちゃめちゃ硬派である。今後、こっち方向にも進むのかなと、色々妄想してしまう。ベテランの風格である。
この映画で、デヴ・パテルはイスラム教徒の英国人を演じている。彼が育ったのは、ヒンドゥ教家庭だ。また、ホテル・ムンバイでは、シーク派の役を演じていた。自分は宗教のことは非常に大切だと感じており、割と何の宗教でも受け入れる日本人には理解の難しい問題があると思う、世界には。異教徒を演じるというのは、俳優にとってどんな意味を持つのだろうか。
旅人の貴方にぜひ見てほしい。